新年あけましておめでとうございます。
本年も何卒宜しくお願い申し上げます。
昨年来、様々な意味で不安定な日々が続いておりますが、歴史の中を生きてきた日本刀を眺め、令和三年も心静かな時間をお過ごしいただきたいと思います。
焼き出しについてのお話し
焼き出しとは、焼き刃の始まる部分の刃のことをいいます。
乱れ刃であっても、焼き刃のはじまりは直刃であったり、のたれ刃であったりします。また反対に乱れ刃からはじまり上身になると直刃になる場合も僅かにながらございます。
そして、刃区(はまち)保護の目的から、区上(まちうえ)から焼き刃が始まるものを焼き落としといい、古い太刀などに見られます。
焼き出しには、刀匠の手癖、特徴が顕著に現れる所であることから、鑑定には見逃すことの出来ない箇所でもあります。
1.直焼き出し(すぐやきだし)
直刃から始まり上身になると乱れ刃になる。大坂新刀などに見られる。
2.湾れ焼き出し(のたれやきだし)
直焼き出しに比べ真っすぐではなく、やや湾れ(のたれ)た刃から始まる。京焼き出しともいい、新刀山城系の鍛冶に見られる。
3.焼き落とし(やきおとし)
生ぶ茎の古い太刀に見られる、刃区から3~5センチ上から刃が始まる。三池光世、豊後行平、古波平等の生ぶ茎太刀に見られる。
4.腰刃(こしば)
刃区(はまち)すぐに大きく乱れた刃が焼かれている。古い刀では、御物「鬼丸国綱」で有名な粟田口国綱、左文字、千子村正一派の刀匠の作で見られる。
5.焼込む(やきこむ)
茎の中から焼き出しが始まっている。
焼き出しの重要性
焼き出しを見る時にはその特徴だけでなく、その刀、脇差、短刀はどこから焼き出しが始まっているのかを見ることが重要です。
茎(なかご)が丁寧に造り直され、如何にも生ぶ茎のように見せかけていたり、故意ではなくとも、綺麗に茎(なかご)仕立てがされている場合があります。
たとえ穴が一つであろうと生ぶ姿であるとは限りません。
そんな点を見極めるためにも焼き出しがどこから始まっているのかを見極める必要があります。
なぜなら刀剣類は、生ぶ茎(うぶなかご)であるのか摺上げ茎(すりあげなかご)かでは、価格的にかなりの差があるからです。
また、上の図のように大摺り上げ無銘の古い刀に見せる手法が取られる場合がありますがその場合も焼き出しの有無はとても有効な判断の手段となります。
博物館などで展示される場合はハバキを付けた状態での展示がほとんどですので焼き出しまで確認することは難しいですが機会があれば是非鑑賞してみてはいかがでしょうか。
どうぞ本年も日本の歴史と共に日本刀の魅力をお楽しみいただければと思います。
ご質問、ご要望等ございましたらご遠慮なくお寄せ下さい。
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