刀の疵を徹底解説‼

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今回は、お問い合わせフォームから刀の疵についてのご質問がございましたので、イラストと共に解説いたします。
日本刀の疵には様々なものがあります。画一的に工業生産されたものではありませんので、色々な欠点といわれる現象が現れる場合や何百年もの年月を経て今も存在することから、致し方ない疵と思われるものもあります。

刀の疵を種類別に解説

カラス口

帽子の先端の部分に出来た刃切れの一種
カラスの口ばしに似ていることからその名があります。
研ぎによる修復は難しく、刀の価値としては相当落ちてしまいますが、平安、鎌倉期の作ともなれば致し方ないものですが、刀は武器であることが基本ですので、武器としての欠点となり価値は落ちてしまいます。

カラス口

刃切れ

カラス口と同じように刃の中にある横のヒビ割れのことです。
戦闘時、このヒビ割れからポキンと折れてしまうことから、実戦にはもう使えません。抜刀道等で使用する場合でも勢いよく折れて飛んでしまうことがありますので大変危険です。
最も大きな欠点であり価値はかなり落ちます。

刃切れ

刃がらみ

刃切れと同様ですが、刃切れが斜めに入っている場合のことを言います。
刃切れと同様大きな欠点となり価値は落ちます。

刃がらみ

刃こぼれ

実戦で使用されたり、何かに当てたりすると、切れ味は良くとも地の部分に比して硬い刃の部分には刃こぼれ、刃欠けという現象が生じます。
研磨で修復が可能ですので修復によりオリジナルな形状をあまり崩さない場合は大きく価値は損なわれません。
大きな刃こぼれがあり、姿や刃文までも変わってしまうような場合はやはり価値は落ちることになります。

ふくれ

刀の製作時に異物が入り、地肌又は刃に空気が入っているような僅かに膨れて見える現象のことを言います。
何百年もの時間の中で何度も研がれてきた刀身の中には、地の中に隠れていた異物のふくれが表れてくる場合があります。
そして、そのふくれの部分が破れて、薄い皮が剥がれたような状態を見せることがあります。
上手な研ぎ師の手にかかると、そのふくれの部分に埋金という(同時代の同じ性質で同じ色合の鉄を埋める)技術により分からないほど上手くふくれを修復し無かったように地肌を美しく研ぎ上げられている場合もあります。
刃中のふくれの修復はもっと難しく、研ぎ師の技量がものを言います。
埋金が明らかに分かる場合はやはり価値は若干落ちますが、分からない程上手く直せてある場合はほぼ落ちません。


ふくれ

割れ(鍛え疵)

刀身にある割れ目の疵のことです。
鍛え割れは、折り返し鍛錬の時の縦の折り返し目が、研ぎにより表に出てしまうことです。当然の結果であり欠点とは言い難いのですが、やはり綺麗な地肌に出てしまうと気になります。
大きさにもよりますが、若干の価格全くないものより落ちざる得ません。
刃割れは、割れが刃中に出来たものです。修復も難しく欠点となります。
棟割れとは、棟の部分に出る鍛え割れのことです。最も鍛え割れの出やすい箇所であり、相当酷い割れでなければマイナス点とはなりません。

割れ(鍛え疵)

しなえ

しなえとは、刀身に複数現れた小さな横線のことです。
百戦錬磨の戦いをくぐり抜け、何度も曲がりを直して復活してきた刀に現れる現象のことです。

炭ごもり

炭ごもりとは、刀身の製作時に鋼の中に炭が残っており、後の世に研ぎに掛けられた時に表に出てしまい、ほんの小さな穴が出来てしまうことです。
実用には差し支えなく、良く見ないと気の付かない小さなものもあります。
穴の大小、数により欠点となりうる場合もあります。

炭ごもり

打ち疵

打ち込み疵、斬り込み疵は合戦による刀の切り込みで出来た疵
鉄砲疵、刀身に鉄砲の弾が当たって出来た疵
矢疵、刀身に矢が当たって出来た疵
打ち込み疵、鉄砲疵、矢疵ともに武勲の誉として賞賛される疵であり、価値は落ちません。

打ち疵

通常疵と言われるものを列挙してみました。
疵とは呼びませんが、焼き入れや、研ぎ、時代の経過による減りなど、特に古い刀身には長い時間の経過の中で避けられない欠点といわれる現象は多々あります。
日本刀は実用の武器として優れた機能を果たすべく工夫されてきた中で自ずと生まれた美しさです。日本刀の疵と言われるものは、鉄の芸術作品として世界最高の美しさを誇るものと言えども、ただの飾り物でなかった以上避けられないことです。
玉鋼の独特な鍛錬方法、焼き入れ、研ぎの技術、武器としての役割により伝えられてきた日本刀、その過程により生まれた痕跡は、むしろ本物の日本刀であることを証明するものです。
素延(ただの鉄板をのばし刀の形状にしたもの)には全く疵というものはありませんが、地金の魅力というものも全くないのです。
疵はないに越したことはありませんが、国宝、文化財にもありますし、保昌、などの柾鍛えの作には縦の大きな鍛え割れが生じていることが良く見られます。
疵を研ぎで消すために、研ぎを重ねるのは如何なものでしょうか。研ぎを重ねることは、刀身を減らすことでもあります。現代の我々が見た目の美しさを追求するあまり減らしてしまっているとは言えないでしょうか。

まとめ

確かに一般的に疵のある日本刀は少ないものに比べて安く購入できます。
ただ、疵があるから日本刀としての本当の意味での価値はないとは言えないと思います。
平安、鎌倉期の日本刀を鑑賞出来るように、日本刀はこれからも何百年と伝えられて行くものです。私達は今一時、預かり繋ぐ存在であることを自覚していただきたいと思います。

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